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建築の構造設計では、鉄やコンクリート、木材など さまざまな材料 が使われます。
それらの「変形のしにくさ」を示す数値が ヤング係数(ヤング率) です。
本記事では、初めて建築構造を学習する方でも理解しやすいように、ヤング係数の基本から解説します。(建築士試験等でも頻出問題ですので、学習の助けになれば幸いです)
また、建築で使われる材料ごとの具体的な値をまとめていますので、構造設計の実務でもすぐに役立つ内容となっています。
1.ヤング係数とは?
ヤング係数とは、「材料の変形しにくさ」を示す数値です。
例えば、ゴムと鉄 を同じ力で引っ張ると、ゴムは 沢山伸び、鉄は あまり伸びません。この「伸びにくさ」を数値化したもの がヤング係数です。

大文字のEであらわされることが多く、単位はN/㎜2です。
2.剛性とヤング係数の違い
ものの硬さを表す数字には「剛性」もありますよね。
剛性と、ヤング係数には次のような違いがあります。
・剛性 → 部材全体の硬さを示す値(形状や寸法にも影響される)
・ヤング係数 → 純粋に材料の硬さを示す値(材料の種類による)
例えば、同じ鉄でも細い棒と太い柱では、太い柱の方が変形しにくいですよね。これは太さが影響しているからであり、剛性は大きくなります。
しかし、使われている鉄自体の硬さは変わらないので、ヤング係数は同じままです。
つまり、剛性はヤング係数に部材の形状(断面積や長さなど)が影響を与えたもの であり、材料の違いだけを評価したい場合にヤング係数が使われるのです。

形と剛性の関係は、また別の記事で詳しく説明したいと思います。
3.ヤング係数が構造設計で登場する場面
ヤング係数について、理解が進みましたでしょうか。
ここでは、ヤング係数が構造設計で登場する場面をご紹介します。
➀ はりのたわみ検討
はりは、想定される重量物が載ったときに、たわみ(変形)しすぎないように設計する必要があります。
このたわみの計算式にヤング係数Eが登場します。
詳細な解説や計算式は別記事にて行いますが、このヤング係数入門編の記事では、「ヤング係数が大きいと、はりがたわみにくい」と覚えて頂ければと思います。
② 柱の座屈検討
柱は、軸方向に大きな圧縮力をうけると、座屈と呼ばれる壊れ方をすることがあります。この座屈がおきないか検討する際の、柱の強さにもヤング率が登場します。
この記事では、「ヤング係数が大きいと、柱が座屈しにくい」と覚えて頂ければと思います。
4.建築で使われる材料のヤング係数
建築ではさまざまな材料が使われますが、それぞれヤング係数が異なります。代表的なものをまとめてみました。
4-1.鋼材(鋼や鉄筋)のヤング係数
建築で使用される代表的な材料の1つが鋼材です。
鉄骨造では、鋼・鋳鉄等、鉄筋コンクリート造では、鉄筋が使用されます。
学会指針では、特別なものを除いて以下が紹介されています。
$$ E = 2.05 \times 10^5 \quad \text{N/mm}^2 $$
ここで重要なのが、鋼材は強度が異なってもヤング係数は同じという点です。
4-2.コンクリートのヤング係数
コンクリートのヤング係数は、コンクリートの気乾単位体積重量γと、設計基準強度Fcを用いて次の式で計算することができます。
$$ E = 3.35 \times 10^4 \times \left( \frac{\gamma}{24} \right)^2 \times \left( \frac{Fc}{60} \right)^{\frac{1}{3}} \quad \text{N/mm}^2 $$
難しい名前と数式が登場しましたので、大まかな意味を説明します。
気乾単位体積重量:乾いた状態(気乾)での、1m3のコンクリートの重さ
設計基準強度Fc:コンクリートの強さを表す値です。詳しくは、別途記事を作成する予定です。
初めて勉強される方は、細かい数式は一旦忘れて、
コンクリートは「重ければ硬い」、「強ければ硬い」と覚えるのも手だと思います。
実務者の方は、上記の式を用いて計算した結果が重要だと思いますので、以下にまとめます。
基準強度Fc(N/mm2) | 気乾単位体積重量γ(kN/m3) | ヤング係数(N/mm2) | |
普通コンクリート | 18 | 23 | 20596 |
21 | 21862 | ||
24 | 22668 | ||
27 | 23576 | ||
30 | 22419 | ||
33 | 25207 | ||
36 | 25949 | ||
軽量コンクリート1種 | 18 | 19 | 14055 |
21 | 14796 | ||
24 | 15469 | ||
27 | 16089 | ||
30 | 21 | 20357 | |
33 | 21014 | ||
36 | 21632 | ||
軽量コンクリート2種 | 18 | 17 | 11251 |
21 | 11845 | ||
24 | 12384 | ||
27 | 12880 |
※ヤング率は小数点以下切り捨てで計算しています。
よりしっかりと学習したい方は、『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説2018年版(書籍リンク)』の「第2章 材料および許容応力度」(p.7~)が参考になりますので、ぜひお読みください。
4-3.木材のヤング係数
木材のヤング係数は、樹種や繊維の方向等によって異なります。そこで、設計に使用しやすいのが機械等級材です。これは、木材を機械によって測定したヤング係数ごとに分類したものです。
等級の名前とヤング係数の関係は以下の通りです。
機械等級区分 | ヤング係数(N/mm2) |
E50 | 3900以上、5900未満 |
E70 | 5900以上、7900未満 |
E90 | 7900以上、9900未満 |
E110 | 9900以上、11900未満 |
E130 | 11900以上、13900未満 |
E150 | 13900以上、15900未満 |
等級区分のEの後の数字に100をかけた値のプラスマイナス1000がヤング係数の範囲です。鋼材やコンクリートと比べて材毎のばらつきが大きいため、設計者の判断が重要になります。
また、樹種ごとのヤング係数の対応関係は膨大な数になりますので、ここでは検索機能付きの対応表を公開されている森林・林業学習館様のHPを紹介させて頂きます。(HPへのリンクはこちら)
5.まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
本記事では、ヤング係数の基本と、建築材料ごとの違いを解説しました。
ポイントを振り返ると:
- ヤング係数は「材料の変形しにくさ」を表す数値
- 剛性 は部材の形状の影響を受けるが、ヤング係数は材料そのものの特性
- 建築材料ごとにヤング係数が異なる(鋼材 > コンクリート > 木材)
- 構造設計では はりのたわみ や 柱の座屈 の計算に使われる
これを理解すれば、構造設計の基本がぐっと分かりやすくなります!
さらに詳しい数式や実務での活用方法は、別の記事で解説予定ですので、ぜひチェックしてみてください。
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