RC造小梁の構造設計を効率化:部材提案ツールの活用法と計算根拠

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この記事では、RC造(鉄筋コンクリート造)小梁の構造設計を効率的かつ経済的に行うための「RC造小梁 部材提案ツール」の効果的な活用方法と、その計算根拠について紹介します。

(※1.概要と2.基本の使い方については他のツールと類似しておりますのでご不要であれば読み飛ばしください。)

1.概要

 このツールは、RC造小梁の構造設計を支援するために開発されたWEBアプリケーションです。特別なソフトウェアのダウンロードは不要でスマホ、タブレット、PCからいつでもどこからでも無料で利用できます。初めてご利用の方はトップページの利用規約をご確認ください。

2.基本の使い方

 STEP1:検定比(初期値は0.95以下)、小梁長さ、長期上端曲げモーメント、長期下端曲げモーメント、長期せん断力を指定します。

 STEP2:はりせい、コンクリート強度、鉄筋径等の設計条件を指定します。

 STEP3:システムを実行をクリックすると設定応力を満たす経済的な設計案が表示されます。

3.おすすめの使い方

    特に条件が決まっていない場合は、まずはSTEP2をスキップしてSTEP3を先に実行することをおすすめします。これにより、普段選択しない部材の中から経済的なものが見つかるチャンスが広がります

 また、STEP3実行後でも、直前に入力した応力条件は引き継がれますので、一度表示されたおすすめ部材を確認し、その後でSTEP2の条件を絞り込みを行う手順でも労力を抑えられます。

 おすすめ部材では全断面の部材が表示されますが、次の手順で「この部材を条件に指定」ボタンを活用すると端部-中央毎に鉄筋量を減らすことが容易です

1. まず部材全体での最大応力を入力します。

2. 次に選んだおすすめ部材の直下にある「この部材を条件に指定」ボタンをクリックします

3. STEP1に応力条件、STEP2に選択部材が入力された状態になります

4. STEP1の応力値を部材の任意の位置の値に変更した後にもう一度STEP3を実行するとその位置での経済的な主筋量が表示されます。

 本ツールは小梁単体の経済設計に特化していますが、スラブと小梁を総合的に経済設計する場合には小梁割り付け&部材提案ツールの活用をおすすめします。(小梁割付け&部材提案ツールの活用方法については別途記事で紹介予定です)

 こちらを活用いただくと、スラブを何分割するように小梁を配置すると合理的な設計になるかといった検討も簡単に可能になります。

4.対象範囲

 本ツールで対象としている範囲は以下の通りです

はりせい(mm)350〜900までの50mm刻み
はりはば(mm)250〜550までの50mm刻み
コンクリート強度基準Fc(N/mm221、24、27、30、33、36
主筋D16、D19、D22、D25
主筋の配置2段以下
ST(せん断補強筋)D10、D13、D16
ST本数2~7(主筋本数以下)
STピッチ(mm)※1100、125、150、175、200
かつ梁せいの1/2以下
ST量せん断補強筋比0.2%以上
鉄筋鋼種D16以下はSD295、D19以上はD345

   ※1. 同等のせん断補強筋量となる部材は同一としています

5.構造計算根拠

 小梁の仕様規定や許容曲げ応力と許容せん断力は「2018鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」を参考にしています。

 長期荷重時に正負最大曲げモーメントを受ける部分の主筋の引張断面積が0.004bd以下になる部材は、主筋が存在応力によって必要な量の4/3以上となるもののみを表示します。

 せん断補強筋は主筋を包含し、主筋内部のコンクリートを十分に拘束するように配置し、末端を135度以上に曲げて定着するか、相互に溶接することを前提としています。

 許容せん断力算定時のせん断スパン比による割増し係数αについては、自動計算と手動入力の両方をSTEP2で選択可能です。長期のせん断力に対してひび割れを許容するかどうかも選択できます。

 長期たわみの検討は、「使用上の支障が起こらないことの検証が必要な場合(平12建告第1459号第1)」に則り、梁せい/スパン<1/10の時のみ行います。計算は単純はりを想定して梁スパンと応力から推定しており、端部曲げの曲げ戻しによる低減効果については今のところ無視しています。荷重条件は等分布荷重、集中荷重、両者の組み合わせの3通りです。両者の組合せを想定した場合には、それらの割合についても梁スパンと応力の値とバランスから推定しています。検定では変形増大係数を8として、スパンの250分の1以下となるものをおすすめ部材として表示します

 主筋本数毎の最小梁幅は日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算用資料集」から片側フック・フック先曲げを想定した以下の値を採用しています。

将来的には片側フック・フック後曲げや、U 字形・フック先曲げ 、交互フック・フック先曲げの配筋も実装したいと考えております。

また、最小値をそのまま使用するとかなり厳しい配筋になりそうですので、ゆとりを持たせた配筋の部材を提案できるモードも追加したいと考えています。

鉄筋の種類と主筋本数毎の梁幅の最小寸法(mm)

主筋径ST径2345678910
D16D10195235285335385435485535585
D16D13210250300350400450500550600
D19D10195240295345400450505560610
D19D13215255310360415470520575625
D22D10200250310365425480540600655
D22D13220265325380440500555615670
D25D10210265330400465530595660730
D25D13225280350415480545610680745
D25D16245300365435500565630695765

6.コスト計算根拠

 おすすめ部材に表示される参考コストは以下の団体様より一般公開されているデータに基づいて算定しています。

施工手間費(型枠は材工共)

参考HP:「一般財団法人建物物価調査会」様 2024.9時点 リンクに移動

具体的な単価に関しては、参考HPをご参照ください。

参考HPの鉄筋ガス圧接手間の単価はD25の値ですが、コスト算出の際は全鉄筋径で共通としています。

また圧接箇所数は主筋1本当たり2か所としています。

こちらのHPでは種々の工事毎の費用や市況などを公表されています。

コンクリート材料費(普通コンクリート)

参考HP:「名古屋生コンクリート協同組合」様 2024.9時点 リンクに移動

具体的な単価に関しては、参考HPをご参照ください。

Fc33以下のものは、普通コンクリート スランプ5~21cm AE減水剤の価格を参照しています。
また、Fc33以上のものは、普通コンクリート スランプ5~21cm 高性能AE減水剤の価格を参照しています。

こちらのHPでは減水剤や骨材の違いによる価格の違い等も公表されています。

鉄筋材料費

参考HP:「東京製鐵株式会社」様 2024.5時点 リンクに移動

具体的な単価に関しては、参考HPをご参照ください。

こちらのHPでは型鋼や板材の価格等も公表されています。

鉄筋の躯体数量は、継手や定着を加味して1割程割増しした値で算出しています。

7. 参考にさせて頂いた書籍とHPリンク集

■参考書籍販売ページ

・日本建築学会様「鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説」  リンクに移動

■参考HP

・「一般財団法人建物物価調査会」様 2024.3時点 リンクに移動

・「名古屋生コンクリート協同組合」様 2024.4時点 リンクに移動

・「東京製鐵株式会社」様 2024.5時点 リンクに移動

最後までお読みいただき、ありがとうございました。本ツールが皆様の設計に役立つことを願っております。

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よもぎふ
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