ヤング係数とは? 建築材料のヤング係数まとめ(怖くない構造設計入門)

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建築の構造設計では、鉄やコンクリート、木材など さまざまな材料 が使われます。

それらの「変形のしにくさ」を示す数値が ヤング係数(ヤング率) です。

本記事では、初めて建築構造を学習する方でも理解しやすいように、ヤング係数の基本から解説します。(建築士試験等でも頻出問題ですので、学習の助けになれば幸いです)

また、建築で使われる材料ごとの具体的な値をまとめていますので、構造設計の実務でもすぐに役立つ内容となっています。

 

目次

(※クリックすると該当箇所にジャンプします)

1. ヤング係数とは?

2. 剛性とヤング係数の違い

3. ヤング係数が構造設計で登場する場面

4. 建築で使われる材料のヤング係数

 4-1. 鋼材(鉄や鉄筋)のヤング係数

 4-2. コンクリートのヤング係数

 4-3.木材のヤング係数

5.まとめ

 

1.ヤング係数とは?

ヤング係数とは、「材料の変形しにくさ」を示す数値です。
例えば、ゴムと鉄 を同じ力で引っ張ると、ゴムは 沢山伸び、鉄は あまり伸びませんこの「伸びにくさ」を数値化したもの がヤング係数です。

大文字のEであらわされることが多く、単位はN/㎜です。

 

2.剛性とヤング係数の違い

ものの硬さを表す数字には「剛性」もありますよね。

剛性と、ヤング係数には次のような違いがあります。

剛性部材全体の硬さを示す値(形状や寸法にも影響される)

・ヤング係数純粋に材料の硬さを示す値(材料の種類による)

例えば、同じ鉄でも細い棒と太い柱では、太い柱の方が変形しにくいですよね。これは太さが影響しているからであり、剛性は大きくなります。

しかし、使われている鉄自体の硬さは変わらないので、ヤング係数は同じままです。

つまり、剛性はヤング係数に部材の形状(断面積や長さなど)が影響を与えたもの であり、材料の違いだけを評価したい場合にヤング係数が使われるのです。

形と剛性の関係は、また別の記事で詳しく説明したいと思います。

3.ヤング係数が構造設計で登場する場面

ヤング係数について、理解が進みましたでしょうか。

ここでは、ヤング係数が構造設計で登場する場面をご紹介します。

➀ はりのたわみ検討

 はりは、想定される重量物が載ったときに、たわみ(変形)しすぎないように設計する必要があります。

 このたわみの計算式にヤング係数Eが登場します。

 詳細な解説や計算式は別記事にて行いますが、このヤング係数入門編の記事では、「ヤング係数が大きいと、はりがたわみにくい」と覚えて頂ければと思います。

② 柱の座屈検討

 柱は、軸方向に大きな圧縮力をうけると、座屈と呼ばれる壊れ方をすることがあります。この座屈がおきないか検討する際の、柱の強さにもヤング率が登場します。

 この記事では、「ヤング係数が大きいと、柱が座屈しにくい」と覚えて頂ければと思います。

 

4.建築で使われる材料のヤング係数

建築ではさまざまな材料が使われますが、それぞれヤング係数が異なります。代表的なものをまとめてみました。

4-1.鋼材(鋼や鉄筋)のヤング係数

建築で使用される代表的な材料の1つが鋼材です。

鉄骨造では、鋼・鋳鉄等、鉄筋コンクリート造では、鉄筋が使用されます。

学会指針では、特別なものを除いて以下が紹介されています。

$$ E = 2.05 \times 10^5 \quad \text{N/mm}^2 $$

ここで重要なのが、鋼材は強度が異なってもヤング係数は同じという点です。

4-2.コンクリートのヤング係数

コンクリートのヤング係数は、コンクリートの気乾単位体積重量γと、設計基準強度Fcを用いて次の式で計算することができます。

$$ E = 3.35 \times 10^4 \times \left( \frac{\gamma}{24} \right)^2 \times \left( \frac{Fc}{60} \right)^{\frac{1}{3}} \quad \text{N/mm}^2 $$

難しい名前と数式が登場しましたので、大まかな意味を説明します。

気乾単位体積重量:乾いた状態(気乾)での、1m3のコンクリートの重さ

設計基準強度Fc:コンクリートの強さを表す値です。詳しくは、別途記事を作成する予定です。

初めて勉強される方は、細かい数式は一旦忘れて、

コンクリートは「重ければ硬い」、「強ければ硬い」と覚えるのも手だと思います。

実務者の方は、上記の式を用いて計算した結果が重要だと思いますので、以下にまとめます。

基準強度Fc(N/mm2 気乾単位体積重量γ(kN/m3 ヤング係数(N/mm2
普通コンクリート182320596
2121862
2422668
2723576
3022419
3325207
3625949
軽量コンクリート1種181914055
2114796
2415469
2716089
302120357
3321014
3621632
軽量コンクリート2種181711251
2111845
2412384
2712880

※ヤング率は小数点以下切り捨てで計算しています。

よりしっかりと学習したい方は、『鉄筋コンクリート構造計算規準・同解説2018年版(書籍リンク)』の「第2章 材料および許容応力度」(p.7~)が参考になりますので、ぜひお読みください。

4-3.木材のヤング係数

木材のヤング係数は、樹種や繊維の方向等によって異なります。そこで、設計に使用しやすいのが機械等級材です。これは、木材を機械によって測定したヤング係数ごとに分類したものです。

等級の名前とヤング係数の関係は以下の通りです。

機械等級区分ヤング係数(N/mm2
E503900以上、5900未満
E705900以上、7900未満
E907900以上、9900未満
E1109900以上、11900未満
E13011900以上、13900未満
E15013900以上、15900未満

等級区分のEの後の数字に100をかけた値のプラスマイナス1000がヤング係数の範囲です。鋼材やコンクリートと比べて材毎のばらつきが大きいため、設計者の判断が重要になります。

また、樹種ごとのヤング係数の対応関係は膨大な数になりますので、ここでは検索機能付きの対応表を公開されている森林・林業学習館様のHPを紹介させて頂きます。(HPへのリンクはこちら

5.まとめ

最後までお読みいただき、ありがとうございました

本記事では、ヤング係数の基本と、建築材料ごとの違いを解説しました。
ポイントを振り返ると:

  • ヤング係数は「材料の変形しにくさ」を表す数値
  • 剛性 は部材の形状の影響を受けるが、ヤング係数は材料そのものの特性
  • 建築材料ごとにヤング係数が異なる(鋼材 > コンクリート > 木材)
  • 構造設計では はりのたわみ柱の座屈 の計算に使われる

これを理解すれば、構造設計の基本がぐっと分かりやすくなります!
さらに詳しい数式や実務での活用方法は、別の記事で解説予定ですので、ぜひチェックしてみてください。

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